第一章:発症 (No.6)
- 2015/09/29
- 16:30
恵祐の母親である美和子は、相変わらずロビーの椅子に腰掛け「疲れた。もう 疲れた」を連発している。父親の次郎が、目の前で脳出血のため倒れ、一緒に救急車で公立病院に運ばれ、集中治療室に入っているのだから、慌ただしくて それは疲れるだろう。ただ、美和子は、『ご用意していただくもの』というA4の用紙を見ながら、疲れたと言いつつも文句を続けている。「歯ブラシとコップは、さっき売店で買ったのよ。古いのだと格好悪い...
止まっているエスカレーター
- 2015/09/27
- 17:00

故障か何かで止まっているエスカレーターを 階段のように歩いた事はありますでしょうか。これって、妙な感じがしませんでしたか。稼働しているエスカレーターを使うのと比べて、自分の身体が何だか妙に感じませんでしたか。経験したことがある方なら、この妙な感じという意味を理解できると思います。この現象は一体何なのでしょう。エスカレーターは電源が切れているだけで、いつもと同じ階段状の物なのです。足裏に感じる様子も...
第一章:発症 (No.5)
- 2015/09/25
- 17:00
恵祐の母親の言うには、この日の朝、父親と母親は市内の銀行に向かった。住民税を納付するためだ。父親は一ヶ月前から腰痛で寝込んでいたが、最近調子を取り戻し、運動も兼ねて徒歩で街まで行ったのだという。若い恵祐の脚で30分ぐらいだが、腰痛が治りたてであり、普段から運動不足の父親には50分くらい掛かった。父親の血圧は高い様子だった事もあり、休み休み歩いて行ったのだろう。母親は別の用事なども有り、同時間にバスで街...
考え次第で 世界は変わる。
- 2015/09/23
- 17:30
例えばの話しですが、自分と親に、血のつながりが無い事を 成人してから知らされたとします。このときに、残念な気持ちになる人もいるかもしれません。また、「この親に育ててもらって良かった」と思う人もいるかもしれません。『事実は同じでも、自分の考え次第で 世界は変わる』というのは、そういう事です。良い事も悪い事も 喜怒哀楽も、すべて、潜在意識が 事実を妙な色に塗り替えようとしています。自分の潜在意識を諭し、共...
第一章:発症 (No.4)
- 2015/09/21
- 17:30

「で、どうなってるの?」そう聞く恵祐に対し、彼の母親は 妙なくらいに落ち着いて話し始めた。「あのね、右視床出血だって。それで今は集中治療室に入ってるの。 脳に溜まった血を抜いている。点滴と酸素マスクしてる。さっき、お母さんも集中治療室に行ってきたの。 意識はあるよ。でも口がきけない。“よいよい” だよ。ああ、片麻痺の事ね。 様態? だから意識はある。 … 助かるかどうかは先生も何とも言えないって。 兎に角...
人生を歩む
- 2015/09/19
- 17:30
例えば、あなたが 小高い山をハイキングするとします。 一日掛かりの長距離ハイキングです。何故って? ハイキングするのに 理由なんか無いのです。 ハイキングは、楽しむことが出来るから歩くだけです。目標は山頂。 でも、山頂の制覇だけでなく、その行程も楽しい方が良いですね。一緒に歩む仲間は 居る時もあれば 居ない時もあったり … あなたの体調も 良かったり悪かったり。さて、このハイキング、どう歩んだ方が良いと思いま...
第一章:発症 (No.3)
- 2015/09/17
- 18:00
恵祐の職場のマッサージ店から最寄りの駅までは、歩いて五分ほどだった。しかし、その時の恵祐は急ぎ足だったから、三分ほどで駅のホームに降り立つことが出来た。ところが、そこからの時間が長く感じる。急いでいる時ほど電車の到着が遅く感じるのは何故だろうか。実際、ダイヤの間隔はいつもよりの空いていた。夕方の三時では、ラッシュアワーのように次から次へと電車が現れないものだ。『もしや、死に目にあえないのだろうか』...
あたし、ノンちゃん。(物語り)
- 2015/09/15
- 16:30
あたし、ノンちゃん。 うん? 本名は、のりこ。でも、のりこって言うよりノンちゃんの方がカワイイでしょ。えっ? 全然カワイくないって? あぁ、そんなこと言って無いかぁ。アハハ ♪でも、こんな顔じゃぁ 可愛くないよね。参ったなぁ。これね、この前 レイプされたときに殴られたの。知ってるよね。昨日も、お見舞いに来たお母さんが 泣きながら「お岩さんのようだ」だって。お母さん、優しいのか 冷たいのか分かんないな。参っ...