第一章:発症 (No.17)
- 2015/11/15
- 18:30
6月3日、恵祐は定休日だった。
午後から母親の美和子と共に父親の見舞いに行くことになったので、午前中は胃ろうについてインターネットで調べてみた。
担当医からもらったプリントにも胃ろうの説明は有り、漠然とではあるが理解出来てきた。
つまり、胃ろうとは、お腹側から穴を開け、胃壁を貫通させる。
そこに『胃ろうカテーテル』というチューブを差し込んでおく。
胃ろうカテーテルは常に設置しておいて、普段は栓をしておく。
食事の時間には口から食べずに、流動食を少しずつカテーテルを介して胃に入れる。
水分も同様で、カテーテルから入れる。
これが胃ろうの食生活だ。
父親の次郎は脳出血の後遺症で嚥下障害となった。
嚥下障害は 摂食障害ともいわれる症状で、口から食べたり飲んだりすると、食道や胃に行かないで気管や肺に入ってしまう。
それでは肺炎や気管支炎になってしまうので、口や喉を使わずに胃に直接栄養を入れるという方法が胃ろうだ。
胃ろうが確立される以前は、鼻の穴から胃まで届く長いチューブを入れていた。
これを経鼻胃管という。
食べ物と呼吸を分けるためのフタである喉頭蓋という平たい軟骨を開けてチューブを入れ、後は胃ろうと同じように流動食と水分を入れていく。
ただ、この方法だと鼻腔内(鼻の穴の中)に違和感や痛みを感じやすい。
また、喉頭蓋を開けっ放しなので、栄養補給していない時は 胃酸が逆流する事もある。
それが肺に入ると、大変に厄介だ。
そのために、場合によっては栄養補給(食事)の度に管を入れ、終わったら外す事もある。
これは非常に患者にとって辛いのだ。
鼻から入れる以前の方法に比べれば、胃ろうは患者に優しいといえる。
しかし、食べ物や水分が、口や喉を通らない事は同じ。
それは一体どういう気持ちなのだろうか。
人間は、食事を楽しみとしている。人によっては食事以外に楽しみが無いという方も居るくらい。
食べるのが嫌で堪らないという方は拒食症と言われ、極一部。
食べ物の味を匂いを楽しみ、冷たい水やビールの喉ごしを楽しんでいる。
人間にとっての摂食とは、単なる栄養補給ではないのだ。楽しみであり幸福感の基本なのだ。
父親の次郎も食べる事が好きだった。定年退職してからは、楽しみといえば テレビと食べる事だけだった。
その食事の楽しみが無くなるわけだ。
毎日毎日、胃ろうカテーテルから流動食と水を入れられ、口からは一切食べられない。
これはどんな気持ちなのだろうか。
(つづく)
大切なあなたが 幸せでありますように。
相談屋さん カフェカウンセリング 横尾けいすけ
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