『 かまいたち 』 (物語り)
- 2017/11/04
- 19:30
#物語り #小説 #昔話 #鎌鼬 かまいたち #妖怪

今日は鎌鼬(かまいたち)のお話しをいたします。
鎌鼬は日本の妖怪です。 なんせ相手は妖怪です。 失礼な気持ちで私の話しを聞いていると鎌鼬の機嫌を損ね、知らぬ間に脚や腕を鋭く斬られるかもしれません。
くれぐれも御注意を。
機嫌を損ねる程度なら良いのですが、鎌鼬を真に怒らせてしまうと、あの日本刀よりも鋭いという長い爪で 首を切り落とされると聞きます。 ですから真摯な気持ちで聞いていただきたいものです。
あなたが首を斬り落とされてから「あの時に鼻で笑っていなければ良かったなあ」と嘆いても遅いのです。 頭部を斬り落とされたあなたの胴体は、その状況に焦りながらも事の修復を試みるでしょう。 頭部と胴体が離れてしまい、頭部が路肩に転がっても あなたの胴体の脊柱の中には原始の脳が入っておりますので、生きながら得ようとするのであります。 しかしながらあなたの眼球は頭部に在る為、胴体単独では 何処に自分の頭が落ちているのか見えず分からず、右往左往する事でしょう。
そんな不様なあなたの姿を 鎌鼬は大木の枝からニンマリと見つめ、そしてつむじ風と共に何も言わずに消え失せるのです。
なにせ相手は妖怪です。 本当に真摯な気持ちでお聴きくださいますようお頼み申し上げます。
今も直ぐ隣りで、鎌鼬はあなたを様子見しているかもしれません。
・ ・ ・
今年は10月下旬になって一気に冷え込みました。 恐らくは今年最後であろう台風も過ぎ去り、先日は木枯らし一号が吹きすさびました。 木枯らしが吹き始めると、冬の訪れには加速が掛かります。 毎日が冷たい北風となるのです。
そんな時分に 腕や脚などの肌を露わにして野原や林道を歩くと、鎌鼬に鋭く斬られてしまうことがあります。
昔から知られることですが、冬期に野外を歩いていると知らぬ間に脚や腕などが切れている事がありました。 これは乾燥して汗油を失った人肌が 体の動きに順応できずに切れたのでは決してありません。 鎌鼬があなたの言動を不愉快に思い、お仕置きとして傷を付けたのであります。
鎌鼬は騒々しいのを嫌うところがあります。 日が暮れ 彼らがゆったり寝ようとしても、人間どもはまだ騒がしく起きている場合、事は起きます。 今日も疲れたと大声で言う者、口笛を吹いて歩く者、或いは酒を飲んで喚き散らす者 … 人間ほど勝手気ままな時間に行動するものは居ません。
鎌鼬はそれを不愉快に思い、日本刀のごとき爪で人肌を斬るのであります。 そうして人間どもに反省を促したりするのです。
秋から冬に掛けて、天気の良い日につむじ風が発生する事があります。 さて、つむじ風と竜巻は似ているようで全く違います。 竜巻は気象現象ですが、つむじ風は鎌鼬の移動の様子です。
普段は姿を現さない鎌鼬ですが、機嫌の良い時にはつむじ風を纏い 人前に姿を現します。 現すと言っても人間が見えるのは渦を巻くつむじ風だけですが。
しかし、彼らの安住の場である里山や森林を侵したり 或いはそこで汚らわしい事をすると、鎌鼬は怒髪天を衝き、いつもの小さな体を相撲取りのような大きな体に変え、人の命をも奪うのです。 一瞬のうちに首が切り落とされます。
でも、とんでもない事をしない限りは、切り傷程度で勘弁してくれますので御安心を。
私も子供の頃には鎌鼬によく脚を斬られたものです。
当時私は多摩ニュータウンという東京の新興住宅地に住んでおりました。 私の両親はそこの団地に早いうちに入居したものですから、整備された住宅地のすぐ隣りには野原や里山がまだ広がっていたのです。
私だけではなく全ての男の子は成長すると共に、どんどん行動範囲を広げました。 団地内の公園から近くの野原へ、野原から椎茸栽培をもしている農家の近くへ、そしてそれより先の里山にまで足を伸ばしたりもしたのでありました。
ガヤガヤと煩い私たち少年に、鎌鼬は不愉快だったのでしょう。里山に入る度に誰かしらが大腿に傷を負わせられたのであります。 私も何度も斬られてしまい鎌鼬の存在と恐ろしさを知ったのであります。
ふと気が付くと、或いは同行する友人に指摘され気が付くと、半ズボンから出していた大腿には、長さが6センチメートルほどの切り傷が有りました。 特徴的なのは、その傷が非常に細いこと。 薄いカミソリで出来た傷よりもよっぽど細いのです。 そして血は出ません。 切り口の細さ故か、全く出血が無いのには驚きます。 また痛みもございません。
気付かぬうちに、血も出さず、痛みもない。そんな斬り方を鎌鼬はいたします。 どうやってそんな事が出来るのでしょうか。
私の同級生には農家の子も半数ほど居りまして、その子の家に遊びに行くことがありました。
彼の家にはご両親とお祖父さんがいらっしゃいました。 ご両親は忙しそうでしたが、そのお爺さんは座った仕事をしている事が多かったのです。
あるとき、お爺さんは私の脚の傷を見つけ「鎌鼬に斬られたなあ」と笑ったのでありました。
カマイタチとは何かという私の問いに、お爺さんは言うのです。
「鎌鼬はイタチの化身。 つむじ風に乗ってやって来る場合もあるが、大抵は目にも止まらぬ早さで動く。 その鋭い爪で、肌を軽く撫でるだけでも斬ることが出来る。 また鎌鼬に斬られても大抵は血は出ない。 それは鎌鼬が加減をしてくれて 皮膚の表面のみを切り裂くからだ」
そうお爺さんは笑いながら語るのですが、私はぞっとしたのを今でも思い出します。
明くる日の昼休み、私はどうも鎌鼬の話しが気になってしまい、昨日のお爺さんの孫に当たる友人に、昨日の話しは本当だろうかと問いかけたのです。
彼は鎌鼬の事は何でも知っているという顔をして自慢げに私に語りました。 昨日のお爺さんの語り口にどことなく似ているのが滑稽でしたが、自信満々で自分の祖父と同じ話しを繰り返す彼にはなんとなく説得力がありました。
祖父と孫の話しは途中までは同じでしたが、やがて違いが生じました。 孫の言うには、何故血が出ないかというと それは真空斬りだからなのだそうです。 では何故真空斬りが出来るかというと、鎌鼬は雷と同じ位の高速で移動が出来るため、その早さゆえ真空が生じると言うのです。 真空が生じると斬りつける相手の皮膚に接しなくともそれは裂けてしまうと言うのです。
今思うと、その真空斬りというのは、当時高視聴率テレビアニメであった「赤胴鈴之助」の影響だったのかもしれません。 主人公の鈴之助が始めに身に付けた必殺技は真空斬りであったのです。

今は冬場に半ズボンで居る子供は少なくなりましたが、遅くまで遊んでいる子供は増えたように思えます。
夕刻の5時の鐘が鳴っても野外で騒ぎ回っていると、そのうちに鎌鼬の怒りを買い、手の甲や首筋を斬られないよう気を付けていただきたいものです。

今日は鎌鼬(かまいたち)のお話しをいたします。
鎌鼬は日本の妖怪です。 なんせ相手は妖怪です。 失礼な気持ちで私の話しを聞いていると鎌鼬の機嫌を損ね、知らぬ間に脚や腕を鋭く斬られるかもしれません。
くれぐれも御注意を。
機嫌を損ねる程度なら良いのですが、鎌鼬を真に怒らせてしまうと、あの日本刀よりも鋭いという長い爪で 首を切り落とされると聞きます。 ですから真摯な気持ちで聞いていただきたいものです。
あなたが首を斬り落とされてから「あの時に鼻で笑っていなければ良かったなあ」と嘆いても遅いのです。 頭部を斬り落とされたあなたの胴体は、その状況に焦りながらも事の修復を試みるでしょう。 頭部と胴体が離れてしまい、頭部が路肩に転がっても あなたの胴体の脊柱の中には原始の脳が入っておりますので、生きながら得ようとするのであります。 しかしながらあなたの眼球は頭部に在る為、胴体単独では 何処に自分の頭が落ちているのか見えず分からず、右往左往する事でしょう。
そんな不様なあなたの姿を 鎌鼬は大木の枝からニンマリと見つめ、そしてつむじ風と共に何も言わずに消え失せるのです。
なにせ相手は妖怪です。 本当に真摯な気持ちでお聴きくださいますようお頼み申し上げます。
今も直ぐ隣りで、鎌鼬はあなたを様子見しているかもしれません。
・ ・ ・
今年は10月下旬になって一気に冷え込みました。 恐らくは今年最後であろう台風も過ぎ去り、先日は木枯らし一号が吹きすさびました。 木枯らしが吹き始めると、冬の訪れには加速が掛かります。 毎日が冷たい北風となるのです。
そんな時分に 腕や脚などの肌を露わにして野原や林道を歩くと、鎌鼬に鋭く斬られてしまうことがあります。
昔から知られることですが、冬期に野外を歩いていると知らぬ間に脚や腕などが切れている事がありました。 これは乾燥して汗油を失った人肌が 体の動きに順応できずに切れたのでは決してありません。 鎌鼬があなたの言動を不愉快に思い、お仕置きとして傷を付けたのであります。
鎌鼬は騒々しいのを嫌うところがあります。 日が暮れ 彼らがゆったり寝ようとしても、人間どもはまだ騒がしく起きている場合、事は起きます。 今日も疲れたと大声で言う者、口笛を吹いて歩く者、或いは酒を飲んで喚き散らす者 … 人間ほど勝手気ままな時間に行動するものは居ません。
鎌鼬はそれを不愉快に思い、日本刀のごとき爪で人肌を斬るのであります。 そうして人間どもに反省を促したりするのです。
秋から冬に掛けて、天気の良い日につむじ風が発生する事があります。 さて、つむじ風と竜巻は似ているようで全く違います。 竜巻は気象現象ですが、つむじ風は鎌鼬の移動の様子です。
普段は姿を現さない鎌鼬ですが、機嫌の良い時にはつむじ風を纏い 人前に姿を現します。 現すと言っても人間が見えるのは渦を巻くつむじ風だけですが。
しかし、彼らの安住の場である里山や森林を侵したり 或いはそこで汚らわしい事をすると、鎌鼬は怒髪天を衝き、いつもの小さな体を相撲取りのような大きな体に変え、人の命をも奪うのです。 一瞬のうちに首が切り落とされます。
でも、とんでもない事をしない限りは、切り傷程度で勘弁してくれますので御安心を。
私も子供の頃には鎌鼬によく脚を斬られたものです。
当時私は多摩ニュータウンという東京の新興住宅地に住んでおりました。 私の両親はそこの団地に早いうちに入居したものですから、整備された住宅地のすぐ隣りには野原や里山がまだ広がっていたのです。
私だけではなく全ての男の子は成長すると共に、どんどん行動範囲を広げました。 団地内の公園から近くの野原へ、野原から椎茸栽培をもしている農家の近くへ、そしてそれより先の里山にまで足を伸ばしたりもしたのでありました。
ガヤガヤと煩い私たち少年に、鎌鼬は不愉快だったのでしょう。里山に入る度に誰かしらが大腿に傷を負わせられたのであります。 私も何度も斬られてしまい鎌鼬の存在と恐ろしさを知ったのであります。
ふと気が付くと、或いは同行する友人に指摘され気が付くと、半ズボンから出していた大腿には、長さが6センチメートルほどの切り傷が有りました。 特徴的なのは、その傷が非常に細いこと。 薄いカミソリで出来た傷よりもよっぽど細いのです。 そして血は出ません。 切り口の細さ故か、全く出血が無いのには驚きます。 また痛みもございません。
気付かぬうちに、血も出さず、痛みもない。そんな斬り方を鎌鼬はいたします。 どうやってそんな事が出来るのでしょうか。
私の同級生には農家の子も半数ほど居りまして、その子の家に遊びに行くことがありました。
彼の家にはご両親とお祖父さんがいらっしゃいました。 ご両親は忙しそうでしたが、そのお爺さんは座った仕事をしている事が多かったのです。
あるとき、お爺さんは私の脚の傷を見つけ「鎌鼬に斬られたなあ」と笑ったのでありました。
カマイタチとは何かという私の問いに、お爺さんは言うのです。
「鎌鼬はイタチの化身。 つむじ風に乗ってやって来る場合もあるが、大抵は目にも止まらぬ早さで動く。 その鋭い爪で、肌を軽く撫でるだけでも斬ることが出来る。 また鎌鼬に斬られても大抵は血は出ない。 それは鎌鼬が加減をしてくれて 皮膚の表面のみを切り裂くからだ」
そうお爺さんは笑いながら語るのですが、私はぞっとしたのを今でも思い出します。
明くる日の昼休み、私はどうも鎌鼬の話しが気になってしまい、昨日のお爺さんの孫に当たる友人に、昨日の話しは本当だろうかと問いかけたのです。
彼は鎌鼬の事は何でも知っているという顔をして自慢げに私に語りました。 昨日のお爺さんの語り口にどことなく似ているのが滑稽でしたが、自信満々で自分の祖父と同じ話しを繰り返す彼にはなんとなく説得力がありました。
祖父と孫の話しは途中までは同じでしたが、やがて違いが生じました。 孫の言うには、何故血が出ないかというと それは真空斬りだからなのだそうです。 では何故真空斬りが出来るかというと、鎌鼬は雷と同じ位の高速で移動が出来るため、その早さゆえ真空が生じると言うのです。 真空が生じると斬りつける相手の皮膚に接しなくともそれは裂けてしまうと言うのです。
今思うと、その真空斬りというのは、当時高視聴率テレビアニメであった「赤胴鈴之助」の影響だったのかもしれません。 主人公の鈴之助が始めに身に付けた必殺技は真空斬りであったのです。

今は冬場に半ズボンで居る子供は少なくなりましたが、遅くまで遊んでいる子供は増えたように思えます。
夕刻の5時の鐘が鳴っても野外で騒ぎ回っていると、そのうちに鎌鼬の怒りを買い、手の甲や首筋を斬られないよう気を付けていただきたいものです。
大切なあなたが 幸せでありますように。
相談屋さん カフェカウンセリング 横尾けいすけ
( ↑ 無料のメールカウンセリング受付中です)
ブログランキングに参加しています。
お読みいただき、良かったなと思ったら クリックして下さい。
〜 あなたの感動を より多くの方と共有しましょう。〜